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「怖いよ。本当に惑星が落ちてくるなら、すっげえ怖い」
咄嗟に言葉を選べない俺に、羽田は爽やかな笑顔を向けた。
「でも、俺、本当に世界が終わっても悔いないよ基本的に。斎藤といっぱいバカやれて楽しかった」
「……」
「今世は、当たりくじだった」
羽田の手が俺の背中をドンと叩いたのと同時に、しだれ花火が咲いた。
「来世も、よろしくお願いしますよ」
お茶でもどうぞ、みたいな軽い調子。前触れなく突き上げてきた涙を、そっぽを向いて隠した。
俺はーー来世は、お前みたいな人間になりてぇよ。
煌めきが、夜空を飛びまわる。大輪が次々に花開く。生徒達の歓声。薄く煙が広がる空。美しい、この世界。
怖い。死にたくない。家族やクラスメイトや羽田にも、死んでほしくない。生きたい。いやだ。怖い。こわいコワイ。
考え出せば、止まらない。
だけど、今の俺にできるのは、この時、この一瞬全力で息をすることだけだ。輝く。弾ける。この、打ち上げ花火のように。
そうやって生きてたら、神様、考え直してくれるかもしれないし。
世の中捨てたもんじゃねえな、こいつら、もうちょい生かしてみるか、って。
何はともあれ。
俺は、最後までこの命を咲かせますよ。
「次、最後の一発だよー!」
誰かが、叫んだ。
《完》
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