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各模擬店、文化部の宣伝、イベントの知らせ。カラフルなポスターのアーケードを通り過ぎ、階段を降りる。
もちろんここも、ポスターだらけだ。
「明日からの模擬店の売り上げでさ、クラス全員でカラオケ行こうみたいな話になっちゅーぞ」
ケケケと笑う羽田。俺は肩をすくめる。
「クラス全員で行けるほど儲かるもんかな」
「んー、まあなんとかなるべ」
あくまでのんびり屋の羽田。なんとかなる、か。
なんとかなるーー世の中ならいいいんだけどなあ。
外に出ると、もう大勢の生徒達が集まっている。
クラスメイト、部活の友達、後輩、絶賛片思い中の女子は探すまでもなくスッと視界に入ってきた。
我が校では、文化祭の前日に校庭から花火を打ち上げるというのが定番だ。
変なところに金をかけるもんだと思うが、まぁ、毎年盛り上がる。
1年の時見た花火はとても大きかった。2年生では、ひたすら美しく見えた。
そして、今年見る花火はおそらくーーーー。
「なぁ」
羽田が、つんと背中を突いてきた。
「これが最後の花火だなんて、信じられねぇよな」
とぷん、と心臓の血液が脈打つような感覚があった。
こんな時も、白亜の校舎は変わることなく俺たちを見下ろしている。
最後ーー「高校生活」最後の、という意味ではない。
広い意味ではそうなのかもしれないが、これは、俺たちにとって「人生」最後の花火となる。
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