類友

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 姉に言いつけられて学校に行くと友達が挨拶をしてくれる。 「おはよう(ゆい)ちゃん!」 「おはよう」  私が返すと友達が笑ってくれる。 「宿題やってきた? あれ難しかったよね」 「そう? 教えてあげようか」 「ほんと!? 助かる~」  算数のノートを広げ、女子のグループが私を囲む。 「(ゆい)ちゃんって話しやすくなったよね。前は怖い感じだったのに」  一人の女子が言うと、周囲の子たちもうんうんと頷く。  少しドキッとする。  今の私は『(ゆい)』として学校に登校している。  私は(むすび)だけど(むすび)じゃない。  今は姉の(ゆい)なんだ。  自分が自分じゃない誰かを演じていることに多少の引っ掛かりを感じる。 「実は(ゆい)じゃなかったりして」  そんなことを言ったのはクラスの男子『関口和真(せきぐちかずま)』だ。  和真は姉が密かに思いを寄せるクラスメイトだ。  彼は私の方を見てニヤリと笑う。 「俺は今のお前の方が良いと思うよ。運命を感じる」 「運命って!」 「和真キザすぎー」  きゃー! っと女子たちが黄色い悲鳴をあげる。  クラスは和やかな雰囲気に包まれたが私はドキドキしていた。  この人、私が偽物って分かってる。  私は帰宅し、姉にその事を伝えた。
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