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私はオレンジジュース(中学生頃に飲んだコーヒーが不味すぎてそれ以来飲めなくなった)、彼はホットコーヒーを頼んだ。
「退屈じゃなかったですか?」
私は訊いた。
大丈夫だよ、と彼は首を振った。
「とても楽しいよ」
そして、彼は春の日溜まりのような柔らかな視線を私に向けた。
「……本当に、いいの?」
内緒話をするように彼は声を潜め、私に訊いてきた。一瞬、何の話かわからなかった私はきょとんと彼を見返した。
「……怖いなら、無理しなくていいんだよ?」
その言葉の奥にある本当の意味に気付くこともないまま、ただ彼を失望させたくないというだけの理由で、私は「大丈夫です」と何度も首を縦に振ったのだった。
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