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――時間感覚が狂いそうなあの独特の薄暗い部屋のなかで、将生さんがシャワーを浴びている間、先に浴び終わった私はいつか本で読んだ言葉を思い出す。
『人は後ろ向きにしか歩いていけない。見えているのはいつだって自分が歩いてきた道程ばかりである。左の道に進んで初めて、右にも道があったことを知る』
つまりはそういうことだと思う。
秋の午後の乾いた日差しの中で、私はやけにだだっ広い柔らかなベッドに白いバスローブを羽織った彼に押し倒される。
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