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異変
始まりは、事の重大さから比べると穏やかだった。
薬を飲みながら仕事をこなしてきたある日、義母から転職を進められた。
知り合いが居る介護施設で求人をしているからどうか?と。
実のところ辞めたいと思っていた矢先の提案だったため、私はそれを承諾した。
桜の花が綻び始める3月。私は転職した。
仕事はすこぶる順調だった。利用者の方とも打ち解け仕事が楽しかった。
実のところ体調は良かった。薬も少しづつ減り、かつての自分に戻りつつあった。私の肉体はかつてないほど高められ、意識はどこまでも澄み渡っていた。
しかし、施設側との方針が合わず、半年の試用期間で退職となった。
働かなくてはならない、働かないと将生さんに迷惑がかかってしまう。
衝き動かされるように、転職活動をした。
次は、義父が施設医を務める施設を勧められ入職した。
義父が来る・・・いつ来るかも分からない。義父の名を出され義理の娘という噂は「あっ」という間に広がり、そのプレッシャーに私は屈し、仕事でミスを連発するようになった。
なんとなく、最初の頃は期待している部分もあった。こんなことがいつまでも続くわけが無い。そう思っていた。
しかし、時間とともにその期待も後ずさっていく。そうすると、親しげにすり寄ってくるのが「絶望」だ。
誰かも言っていた。絶望が一番たちが悪いと。
私はいま自分が抱えている苦しみよりそのものよりも、この苦しみが続くのだろうという見通しに一番苦しめられていた。
それから、
あっさりと壊れた。
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