若さん

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 「おととしは三日。去年は三週間。で、今年は三ヶ月、来年は三年って言うんだろうな。だんだん貴女に対する記憶の感覚が曖昧になってきているから、 このままいけば自然に消えてくれるかも」 そうなれば、この女性(ひと)の前で仮にも夫だった人間に手荒なことをしなくて済む。 と言うより、早く成仏してもらわないとこの元奥さんが、青年の術によって引き寄せられているパワハラ夫に「かわいそう」なんて情がわいてきてしまったら(こと)だ。 急がないと元奥さんまで連れて行かれかねないわけで。 しかも何という巡り合わせだろう。 超がつくお人好しで心はガラスのハート。行くあても頼る人も無かったこの元奥さん。実は、代務住職の資格を持っていた。 「間違いなくお父さんのだわね。あんたが胸張ってお寺を継げるまで、この方に居てもらいなさいって」 そう。この人はもう、寺には欠かせない人材なのである。 あるうららかな午後、一台のキャンピングカーが道の傍らに停車していた。 通りかかった二人の高校生が不思議な看板に目を止める。 『わけあって移動寺院やってます。お困りごとはありませんか? 当寺院は24時間年中無休。人間関係幽霊関係全てOK。どんな相談ごとにも応じます。アットホームなお寺です。このお(うち)には誠実な副住職さん、きっぷのいい坊守さん、真面目な代務住職さん、やる気満々の跡取り息子がいます。どうぞよろしくお願いします。』
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