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第十二章 二 王宮へ
高い天井から下がる豪華なシャンデリアに見守られながら、王宮入りのご挨拶は滞りなく終わった。
両陛下はようやく事が収まって安心したのか、前回よりもあからさまに上機嫌。遠回りしたおかげでより一層歓迎されているようで、得したような気もする。
マルグレト様も心から私を歓迎してくれて、気さくに声をかけてくれた。
エルジナだけが、一言も何も言わずに終始不愛想で、儀礼的にこの場に出席しているだけという空気を出していた。前回私が断られるのを見て笑いをかみ殺していたことを私は忘れていない。そのエルジナが今日は不愉快な思いでここにいるとしたら、いい気味だわと思った。
昼食会の後、お父様の帰りを見送ってから、マルグレト様に案内されて、私に用意されている部屋へと向かった。
夕方までにはリラがこちらに到着し、宮廷が用意してくれた他の侍女達とも顔合わせをする。トルソーの荷解きもその後に侍女達がするので、私はそれまで自由に過ごしていいらしい。
「私やエルジナの部屋はあちらの棟ですので、少し離れていますが」
途中の廊下で、マルグレト様が窓の外を指して言う。
「この先に貴女の部屋があります。侍女たちの待機部屋が側にありますので、不便をなさることはないかと思います。私に御用の時は、侍女に言って呼んでいただいてもいいですし」
「まあ、殿下を呼びつけるなんて」
「ハハ、構いませんよ。ですが、ご面倒でなければ貴女が直接来てくださっても構いません。交流を制限する目的で部屋を離してあるとか、向こうのエリアに入るには許可がいるとか、そういうことはありませんから自由にお越しください」
「それは嬉しいですわ。殿下とお話ししたいこともたくさんありますし、遠慮なく会いに伺います」
「本当ですか? それは楽しみです」
マルグレト様はふわりと笑顔を見せる。
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