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「それはもちろん……でも、やはり私のしたことは許されることではありません。本当に申し訳ありませんでした。このことは、何度謝っても謝り切れません」
私はそれを聞いて笑ってしまった。
「何度謝っても謝り切れないなら、これ以上謝るだけ無駄ですわ。わたくしは過ぎたことは気にしませんの。最後にはわたくしを選んでくださったのですから、それで十分です」
「デミルカ嬢……」
マルグレト様の瞳は、ふっと柔らかさを宿す。
「貴女は本当に、とても魅力的な方ですね。私はそれをずっと知っていたのに……」
「え?」
「先日の貴女の話を伺って、思い出したのです。私も貴女と同じでした。花嫁候補は何人かいましたが、きっと私は貴女を妻にするのだろうと、そうなるといいと、まだ少年だった頃から思い続けてきたんです。貴女の声やしぐさや表情や……言葉の潔さが、私はとても好きでしたから。
でも、貴女の中に、私への感情が一向に見えてこなくて……。いつもどこか形式的というか、何か越えられない壁がある気がして、もっと親しくなりたいのに、このまま愛されないのではないかと、不安に思っていました。
ジルやレオンが貴女と楽しそうに話している姿が羨ましくて、でもそこへ私が近づくと貴女は途端に畏まってしまうし……王太子とは一生こんなに孤独な思いをするのかと……。そんな気持ちだったから、アシュリーに惹かれてしまったのかもしれません。
けれどあの日、貴女の心が私に向いていると初めて感じて、言葉にならないくらい嬉しくて、その瞬間から私の心は貴女に戻ってしまいました。でも今の今までアシュリーを想い、貴女に無礼を働いておきながら、“やっぱり貴女を妻にしたい”などとどの口が即答できるのかと……。本当に自分の節操のなさに悩み、自己嫌悪の日々でした」
その話を聞いて、思わず天を仰いだ。
マルグレト様の気持ちはずっと私にあった。
涙が込み上がるのを、必死にこらえ、小さく息をついて気持ちを整えてから、再びマルグレト様と向き合う。
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