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「全てはわたくしの責任です。殿下――わたくしは、恋というものを知らずに生きていたのです。それが貴方を苦しめていたなんて、一度だって考えたこともなく……。でも今は違います。自分でも不思議なくらい、貴方を愛おしく思っています。これからはもう同じ思いはさせません。貴方とわたくしが近しい仲であることも、わたくしのこの気持ちも、ちゃんと伝わるように心がけていきますわ」
「本当ですか?」
「ええ。そのためにも、まずは話し方を変えていかなければなりませんわね。わたくしの普段の話し方が、殿下へのご無礼にならなければ、ですが」
「それはぜひ、お願いします。私もそうします。急には切り替えられないかもしれませんが、少しずつ……」
「ええ、少しずつ」
思わず笑みを零すと、マルグレト様もつられて笑った。
「では、二人の時は殿下と呼ぶのをやめて、マルグレト様とお呼びしてもよろしいですか?」
「あ……急に近くなったような気が……」
左胸を押さえながら喜びを示すマルグレト様は、可愛らしい。
「わたくしのことはデミルカと呼んでください」
「え……でも……」
「ジルもレオンも、エルジナ殿下だってそう呼びますわ。それなのに夫になる方にだけいつまでも“嬢”なんて呼ばれるのは嫌です」
「で、では……」
小さく咳払いをして、
「――デミルカ」
マルグレト様がそう呼んだ途端、二人の間の空気が一変した。
体が引き寄せられる感覚のままに、どちらからともなく両腕を差し伸べ、互いをきつく抱きしめる。
「デミルカ……貴女を愛しています。本当に、心から」
「わたくしもです、マルグレト様。どう言葉にすればいいのか、わからないほど……」
アレンやアシュリーといったい何が違って、こんなにも胸がいっぱいになるのだろう。
どうしてこんなに体が溶けてしまいそうになるのだろう。
マルグレト様の優しい匂い。包み込む感触。
ずっと目を奪われ続けた柔らかな金髪に、今は手が届く。
これまでの苦労なんて全部忘れてしまうほど、それは私にとって、際限なく大きなご褒美だった。
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