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「でも、貴方が軍事について懸命に学んでいることは、話には伺っていましたし、評価が高いことも知っていました。それをあまり念頭に置かずにいたのは、わたくしの落ち度であり未熟さに他なりません。
殿下、これからわたくしはマルグレト殿下との治世を目指していくことになりますが、貴方の知見や能力にも頼らせていただきたいのです。つまり、マルグレト様か貴方かどちらかの治世ではなく、この国の未来のために、三人で手を携えていきたいと――わたくしはそう考えております」
「なん、だって?」
エルジナは信じられないといった様子で、怪訝そうにこちらを見る。
「お前は馬鹿なのか? 俺はその剣でお前を斬っただけでなく、兄を追放しようとしていたんだぞ。全てを知って、地位も手に入れたのだから、反逆者を告発するには絶好の機会だろう。放っておけばまた裏切るかもしれないのに、いったい何を考えている」
「ですから、もう貴方を放っておかないと申し上げております」
私はエルジナに近づき、抱えていた剣を差し出した。
「これは貸しですわ、エルジナ殿下。貴方がわたくしになさったことも、マルグレト殿下になさろうとしたことも、このまま闇に葬ります。そのかわり、わたくし達を敵視するのをやめていただきたいのです」
「馬鹿な……どうかしている」
「そうかもしれませんね。けれど、家族になるからには貴方のことを大切にしたいし、努力なさってきたことはきちんと実を結ばせたい。貴方の意見も聞き入れながら、マルグレト殿下とうまく疎通していけるように手を尽くしていきたいのです。軍事に精通した貴方がいてくだされば、こんなに心強いことはありません。それに――何より、マルグレト殿下は貴方を大切に思っていらっしゃいます」
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