終章 二

1/2
前へ
/188ページ
次へ

終章 二

 王宮での暮らしにも慣れてきた頃、ジルが私を訪ねてくれた。  何やら相談事があるという連絡をもらっていたのだけれど、聞いてみるとメリアナとの結婚話が進みそうだとのこと。  何もかもが思いどおりになっていくことに笑いそうになったが、これは私の手柄ではない。メリアナが執念で勝ち取ったのだろう。 「いいじゃない。性格はちょっと難ありだけれど、彼女ならきっと元気な跡取りを産んでくれるわ」 「そうか。君が気分を害さないか心配だったのだが、それなら良かった」 「メリアナが貴方に嫁げばサランデ家を利用できる。私にとっても願ってもないことよ」  そう言うとジルは笑った。 「いや、実は俺もそれを考えていたんだ。メリアナ嬢は君ほど頭は良くないが、こうしてほしいと言えば、特に深く考えずに従ってくれるところがある。なんというのかな……よく言えば素直、悪く言えば無知」 「メリアナが素直だなんて感じたこともないけれど、確かに政治的な働きかけには無頓着というか、どうでもいいと思ってそうだわ」 「そうなんだよな。そういう思想のないところが、意外と妻にするには面倒がなくていいような気がしてね」 「いいと思うわ。貴方はおおらかで優しいから、メリアナも貴方といれば少しはまともな人間になるでしょうよ」 「そんなに悪くもないんだがなあ」 「先に悪く言ったのは貴方よ、ジル」  私の部屋の側にあるこの応接ルームは、プライベートな来客を迎えるための専用の小部屋だ。  壁には絵画が掛けられ、小さめのダイニングテーブルが設置されていて、食事を共にすることもできる。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2485人が本棚に入れています
本棚に追加