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「それにしても、グランシェド家の知見はとても広くて深いな。私が何も知らない間に、デミルカはこれだけのことを学んできたのだと思うと――しかも、実際に経験が伴っているのだから、いつになったら追いつけるのかと不安になってしまう」
「私は逆に、すぐに追いつかれそうで不安だわ。マルグレト様は頭が良すぎるんだもの。それとも、やっぱり素養があるから入るのが早いのかしら」
私は書棚のほうに目を向けた。
「ああ、あの書物のこと? いや、あれには素養と呼ぶほどの学びはなかったよ。統治に関してはどの本も共感できる点が少なくて、本当にこのような方法で国を治めていくのかと、どうにも腑に落ちなくてね。
かといって何が正解なのか……漠然と理想とするイメージはありながらも、それが合っているのかすらもわからないし、もちろん実現の方法もわからないし……。実を言うとね、父の方針はエルジナが受け継いでいるし、私は何をすればいいのか、存在意義があるのか、ずっとよくわからなかったんだ」
「え?」
「ただ血統を次に繋げていくためだけの、中継ぎでしかなくて、きっと何も成し得ないまま一生を終えるのだろうと……。でも、貴女が持ってきてくれたグランシェド家の考え方は、私がずっと求めていたもので、ようやく答えを見つけた気がして、そうだな……、ぼやけていた世界がようやく鮮明に見えた感じ」
マルグレト様は笑う。
これまでずっと、一人きりでそんなことを考えてきたのかと思うと、胸が苦しい。
もっと早く彼に寄り添ってあげられていれば――ついそう思ってしまうけれど、過ぎてしまった時間は取り戻せない。
これから埋め合わせていくしかないし、これからいくらでも埋め合わせていくことができる。
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