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ノックの音が響き、執事がティーセットを運び入れた。
ここに来てから、毎日のようにマルグレト様の入れるお茶をご馳走になっている。
今日は私がプレゼントしたローズティーを入れてくれるらしい。
「このローズティーは、新鮮で甘い香りがして本当に美味しいね」
「そうでしょう? グランシェドの自慢なの」
「一度グランシェド領に行ってみたいな……」
ポットに茶葉を入れながら、マルグレト様が言う。
「行きましょう、ぜひ。きっと皆歓迎してくれるわ。グランシェドでは私達と民が会話をするのが普通のことなの。フフ、きっと貴方は驚くでしょうね」
「なんだか想像がつかないけれど……私とも話してくれるだろうか」
「そうね、最初は緊張するかもしれないけれど、貴方の人柄が伝わればすぐに馴染んでくれるわ」
テーブルにはお茶とお菓子が並べられ、マルグレト様も席に着いた。
最初は「気分で選べるように」と何種類もお菓子が出てきたが、いつでも何でもありがたくいただくからと執事に伝えて、一日一種しか用意しないようにしてもらった。マルグレト様も本当は普段あまり菓子を食べないらしく、最近は私の分だけ準備してもらって少し分けてあげることも多い。
「うん、やっぱり美味しい」
ローズティーを飲んで頷いたマルグレト様は、やっぱり可愛らしくて、私もついつい笑顔になってしまう。
「グランシェドもいいけど、王都の街も面白いわよ。私はずいぶん前から男装して街を歩いていたけれど、良くも悪くもいろんな発見があるわ」
「デミルカはいろんな経験をしていて羨ましいな……。私はそういう自由は得られないから」
「あら、でもエルジナ殿下はけっこう自由に出ているみたいだけど……」
「え?」
「あ、いえ、私の勘違いかもしれないわ」
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