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そういえばどうしてエルジナはあんなに好きに出掛けているのかしら。
アレンが剣を向けた時に誰も来なかったということは、あの時は単独行動をしていたのだろうし……。ジルの家にも一人で来ていたし、アシュリーのところにも……。
日常的に軍の施設に足を運ぶ分、マルグレト様よりは外に出る機会が多いのだろうけれど、それにしたって自由すぎるわ。今度聞き出してこなきゃ。
「それより、マルグレト様も服装と髪型を変えれば何とかなるんじゃないかしら。実状を見てもらうためにもぜひ連れていきたいわ。そうだ、二人でグランシェド家に行くと言って、そこで姿を変えて外に出れば……」
「そんなことができるの?」
「できると思うわ。あ、でも……」
私は思い出した。
外出に必須の、大事なものが欠けていることを。
「でも?」
「……理解のある護衛がいないわ」
さすがの私も、エルジナのように単独で出かける勇気はない。
しかもマルグレト様を連れるなら、なおさら。
改めて、アレンにどれだけ助けられていたかを思い、マルグレト様の前だというのに少しだけ気持ちが沈んでしまった。
「そういえば、貴女が連れてくるのは侍女と護衛が一人ずつの予定が、護衛はキャンセルになったと聞いたんだったな。何か事情が?」
こちらを気遣うような表情のマルグレト様。
話すなら絶好のタイミングだ。でも……。
「貴方には、あまり気分のいい話ではないかもしれないわ」
「構わないよ。デミルカ一人にそんな顔をさせるくらいなら、話してもらえたほうがいい」
「マルグレト様……」
彼の優しさに甘えることにして、私はアレンのことを話した。
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