終章 三

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 そんな話をしていたら無性に外に出たくなったので、マルグレト様と二人で庭に出た。  王宮の庭は裏の方が広く、刈り込まれた植木で迷路のようになっている中庭や、もっと奥の方には池やあずまやもある。  一面の緑が美しいこの庭は、人の手で整えられているとはいえ、王都内では数少ない、自然の息吹を堪能できる楽園だ。  マルグレト様の腕に手をかけ、気持ちのいい午後の風の中を寄り添って歩いていると、改めて自分の暮らしが一変したことを実感する。  隣を見上げたら、ふわふわの金髪が風に揺れている。そっと手を伸ばして触れると、マルグレト様はこちらを向いた。  微笑みかける温かで優しい顔は、いつでも瞬時に私の心に熱をくれる。  光が溶け込むようなその美しさから目が離せなくなってしまった私へ、マルグレト様がふいに言葉を紡ぐ。 「貴女が来てくれてから、私の日々はとても明るく美しいものになった。たくさんの楽しみと幸せをもたらしてくれてありがとう」  それを聞いて、思わず瞳が潤んでいく。 「マルグレト様……」  ここに来たらしようと思っていたことがたくさんあった。  正式に結婚するまでの間にも、政治面で進めていけることがいくつかある。  でも、とりあえず今は。  もうしばらくの間は。  マルグレト様と過ごせる時間を何よりも大切にして、愛を育んで絆を深めていきたい。  それは必ず、私達二人とダルガーナ王国、両方の未来のためになるに違いないのだから。 <完>
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