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父はチラリと視線をよこす。
私は頷く。
「そのように仰せられましても、わたくしといたしましては容易く同意することはいたし兼ねますわ。とはいえ、マルグレト殿下にも事情がおありのご様子……。本日のところは一旦下がらせていただきますので、この件に関しては改めてお話をする機会をいただけますでしょうか?」
「そ、そうだ、そのように致そう。それでよいな? マルグレト」
取りなす王に、
「……はい」
王子は自責の念があるのか声を震わせ、手首をギュッと掴んで俯いている。
ふわりとウェーブする金髪の奥に、憂える瞳が美しく揺れる。
この場で破談を成立させるだけの気概すら無いなら、悪あがきなんてしなきゃいいのよ。
そう思いながら、私は丁寧にお辞儀をしてその場を後にした。
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