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 神に仕える者には、三種類ある。それは「役に立ちたい志」を持つ者と「皆を救いたい」者と、逆に「自分が救われたい」者だ。  もし愚かな悪魔に問いかけられたなら、それぞれ何と返答したのだろう。  重要な部分を端折って結果を話してしまうと、「役に立ちたい志」を持つ者は皆口を揃えて”聖なる教え”とやらを唱え初め、「皆を救いたい」者は現実の厳しさを受け入れ切れずに地へと堕ちて行った。  その悪魔が出会った者たちの中で、唯一まともでかつ何とも言えない反感を抱いたのは「自分が救われたい」者だった。 「自分が救われたい」者の名はフラリー・サザーランド。  小柄で華奢な体つきのその容姿から子供に間違われることもしばしばあり、儚い野花の様な者だった。相手の心を探る様な大きな瞳と、クルクルと無造作にカールしたボブヘアが特徴的な、成人女性である。  悪魔は至って単純としか思えない”問いかけ”に耐え切れず、堕ちて行った者たちを見て味を占め、フラリーに対しても罠を仕掛けることにした。不幸なことに彼女の容姿は人だけでなく、悪魔さえも魅了したのだ。  ウェルターが日頃から多少派手なよそ行きの服を着こなすのは、これは八割型彼のエゴだが、相手に友好的な第一印象を与えるためだった。  皆『肝心なのは中身』とか言いつつ、ボロ布に身を包む人間に対しては酷い扱いをするので、その悪魔は”勝ち組”に入ることにした。  悪魔の名はウェルター・フェレス。  バカンス名義で人間界に転がり込んできた悪魔だ。
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