僕が自殺に至るまでの話

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 その日依頼をしてきたのは、ちょっとした有名人だった。  四年前の事件で家族を殺され、天涯孤独になった哀れな女の子。  「たしかマスコミにつけ回されて揉めてたんだっけ」と思い出したところで、対面に座った少女が話を切り出した。 「家族を殺した犯人に、ダイブしてほしいの」  ずいぶん歪んでいる、と思った。  微かに震える声音も、僕を見ているようで見ていない瞳も。 「お母様やお父様、ではなく?」 「それはもう見てもらったよ。捜査の立ち会いで」  断片的にしか見せてもらえなかったけど、と少女は付け足す。  赤に近いセミロングの茶髪に、神経質そうな目。  歳はたしか事件のときに十四だったから、今は十八歳か。  なれなれしい口調なのに、どこか怯えているような少女だった。 「ここでも断片的にしか見せてもらえないのかな。刺激が強いだとか、なんだとかで」 「望むならすべてお見せしますけど、ダイビング技術の基幹に抵触した場合は即時ダイブを中断します」  最初にユキシロと名乗った少女が、疑問符を浮かべる。一瞬僕を捉えた瞳は揺れていた。 「どうして? もうなくなるんでしょ?」 「よくご存じですね」  怯えるように僕を睨んだ少女に、苦笑を返す。  十八歳の女の子にとって両親は灯台のようなものだ。暖かくもあり、道標でもある。若くしてその頼りを奪われた彼女が生きるには、世の中の全てを警戒するしかなかったのだろう。
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