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その日はやけに疲れて早々に寝てしまい、
次の日の朝早くに目が覚めたら、病室に母と父がいた。
母は私と目が合うなり、
「つばめ! 心配したんだから! すぐこれなくてごめんね!」
と言う。
母の目が赤いことに気づいて、私の心はズキンと痛んだ。
これまで母にこんな目、させたことなかった。それほど心配していたのだと思う。
「……こっちこそ、ごめんなさい」
「身体は大丈夫とは聞いてたけど、顔色もいいわ。よかった」
「うん。かすり傷だって。すごいわよね。人間って結構頑丈なのね」
「そんなのんきなこと、言ってる場合じゃないわよ」
母は苦笑する。しかし、安心したように息を吐いた。
「入院してみて思ったけど、おいしいよ。病院のご飯」
なんだかんだ、食堂以外で食べたことなかったから。バランスもいいし、味もおいしい。
入院患者と言っても私は健康だからかもしれない。そんなことを話していると、父は深刻そうな顔で、
「工藤から聞いたけど、つばめ、本当に3か月間の記憶がないんだな? 嘘ではなく……」
と聞いた。
「なんでそんなしょうもないウソつくの」
私は眉を寄せる。「でも大丈夫。3か月の記憶なんて、あってないようなものだし」
正直3か月分の記憶なんて、普段は失っても困らないようなことばかりだろう。
そう、普段通りなら……。
「天馬と入籍したのは聞いてるな」
「……うん」
私は頷く。みんなの話を聞いていると、どうやら天馬先生と入籍したというのは間違いないらしい。
それが確信に変わって、私は内心でため息をつく。
これまでほとんど何も変わらなかった関係が、なんでそんなに急に変わっているのだろう?
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