2章:思い出せない3か月間と謎のメモ

2/17
373人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
 その日はやけに疲れて早々に寝てしまい、  次の日の朝早くに目が覚めたら、病室に母と父がいた。  母は私と目が合うなり、 「つばめ! 心配したんだから! すぐこれなくてごめんね!」 と言う。  母の目が赤いことに気づいて、私の心はズキンと痛んだ。  これまで母にこんな目、させたことなかった。それほど心配していたのだと思う。 「……こっちこそ、ごめんなさい」 「身体は大丈夫とは聞いてたけど、顔色もいいわ。よかった」 「うん。かすり傷だって。すごいわよね。人間って結構頑丈なのね」 「そんなのんきなこと、言ってる場合じゃないわよ」  母は苦笑する。しかし、安心したように息を吐いた。 「入院してみて思ったけど、おいしいよ。病院のご飯」  なんだかんだ、食堂以外で食べたことなかったから。バランスもいいし、味もおいしい。  入院患者と言っても私は健康だからかもしれない。そんなことを話していると、父は深刻そうな顔で、 「工藤から聞いたけど、つばめ、本当に3か月間の記憶がないんだな? 嘘ではなく……」 と聞いた。 「なんでそんなしょうもないウソつくの」  私は眉を寄せる。「でも大丈夫。3か月の記憶なんて、あってないようなものだし」  正直3か月分の記憶なんて、普段は失っても困らないようなことばかりだろう。  そう、普段通りなら……。 「天馬と入籍したのは聞いてるな」 「……うん」  私は頷く。みんなの話を聞いていると、どうやら天馬先生と入籍したというのは間違いないらしい。  それが確信に変わって、私は内心でため息をつく。  これまでほとんど何も変わらなかった関係が、なんでそんなに急に変わっているのだろう?
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!