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1章:それまでの私たちとなくなった3ヶ月間の記憶
まだ少し肌寒いけど、もうコートがなくても大丈夫なほど暖かさが増してきた。昨年買ったダックブルーの七分袖ワンピースに、少し厚めのカーディガンを羽織っている私は、天馬先生と二人、カフェのテラス席でお茶をしていた。
私は、この春発売という『桜とモモのスムージー』を飲んでいて、天馬先生はと言うと毎回変わらずアメリカンのブラックだ。
私は街の景色を眺めながら、スムージーを半分飲んだところで、やっぱり肌寒くなってきたことに気づく。そういえば、ストールを忘れてきたなぁ、とのんきに考えたところで、ふと最近見た映画のワンシーンを思い出す。
寒そうにしているヒロインに、相手役の医師が自分の白衣を羽織らせる。私はそれを脳内で、一条先生と天馬先生に置き換えて、うっとりと見つめていた。
一条先生と天馬先生なら、映画の中の二人より完璧にいいシーンになるだろう。しかもその二人なら、画面の中ではなく、生で見放題。私はいつも、その二人を生で見れる特等席にいる。
ふふ、と口元が緩みそうになって、それを隠すように話を始めた。
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