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誠は消沈していた……。
どうやって家まで帰ってきたのかすら記憶にない。
しかしやっと今家に帰ってきた。
家に帰ればいつもと同じように元気の良い声で妻である美琴が迎えてくれる。
「そうだ!家に帰れば……家にさえ着けば……あいつが俺にはいる……。」
誠はいつものように独り言を呟くが、その声に元気はなかった……。
「……美琴!」
家の前に美琴が立っている。
やっぱり今日も自分を迎え入れてくれた。
誠はそう思うと、少し心が落ち着いた。
「あなた、おかえりなさい。」
美琴は誠に声をかけるが、いつものように元気はない。
(あなた? いつもはまことなのに……。)
誠は何故か美琴のその言葉に、言い得ぬ不安に襲われた。
「今日はね、あなたに伝えなければならない事があるの。」
(伝えたいこと? なんだ? 遂に子供でもできたか?)
誠は考えを巡らせて無言でいると、
「私ね、あなたと別れるわ。もうここを出て行こうと思うの。」
!?
誠の嫌な予感は当たった。
「なぜだ!! どうしていきなり! なんでこのタイミングで!」
「あなたは一度も私を愛してくれなかった、ただの一言も愛していると言ってくれなかったわ。それが私には辛かった……。」
「すまない!! それはすまなかった! ならここで言おう! 愛してる!!」
「もう遅いの。それに私が好きだったのは最強だったあなた……今のあなたじゃないわ。」
「そんな……だったら俺はまた強くなる!またすぐに最強になって見せる!」
誠は必死に食い下がった。
今、もしも美琴さえも自分の前からいなくなれば自分が自分で無くなる気がしたのだ。
「あなたには無理よ、だって修羅ちゃんがいるもの、彼にあなたは勝てないわ。」
「彼? お前? それ……どういう意味だ?」
二人の会話に一人の場違いな暢気な声が参入してきた。
「もうよしたら? センセ。センセも悪い人だなぁ~こんなに可愛い嫁さんに愛してるの一言も言わないなんて、ほんとセンセってどうしようもないクズですね。」
その声の主は聞きたくもない修羅の声だった。
修羅は美琴の隣に立つと左手で美琴の肩を抱き、そのまま左の乳房を揉みしだきながら、美琴にキスをした。
……。
「きさまあああああああああああああああああああ!!」
誠はふざけた真似を見せつけて来た修羅に激怒した!
「あれ? またやります? 今度は殺しちゃいますよ?」
いけしゃあしゃあと修羅は誠に言い放つ。
「もうやめて!!」
それを美琴が止めた。
「言ってなかったけど、あたし修羅ちゃんと愛し合ってるの。だって彼優しいし、強いのよ。あなたよりもね。」
「そんな……嘘だろ? 嘘だといってくれ! みこと!!」
「そんな叫ばなくたって聞こえてるわ。もうあなたに未練はないの。これ以上情けない姿を見せないでくれる? さよなら、あなたといた時間は…」
「本当に無駄だったわ!!」
その言葉は誠の胸に深く突き刺さった。
(俺は夢を見ているのか?)
「じゃ、センセそういうことなんで! あ、そうだ。もうこの屋敷もセンセのものじゃなくなったっすから、荷物は外に出してあるんで勝手に持って行ってください。あ、あと、もうセンセはこの町にいられないとおもうんで、さっさと町を出たほうがいいっすよ?」
そういって修羅は美琴を連れて消えてく。
こうして誠は全てを失うのだった……。
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