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そして今、小百合は人生で二度目の略奪に遭っている。
今度の相手は誠であった。
また知らない男に自分が奪われ、そしてまた誰かに売り飛ばすようだ。
本来ならば明日には奴隷として売られる予定であった小百合。
しかし、偶然にも自分を攫って、売ろうとしていた鬼達は見知らぬ男に殺された。
両親を殺し、自分を傷つけた鬼達。
憎くて憎くて仕方ないはずの鬼が死んだ。
それなのに、小百合は何も感じない。
嬉しくもなければ恐怖もない。
もう小百合の心は既に死んでいたのだった。
故に逃げるという選択肢もそこにはない。
すると自分の前に憎い鬼達を殺した男が近づいて来る。
自分も殺されるかもしれない……。
しかし、どうでもよかった。
男は言った、「俺の物だ」と……。
そう、もう自分は自分であっても自分の物ではない。
だからこれは自分ではない。
自分は既に死んでいるのだから…
それなのに、なぜかその男が気になる。
何も感じないはずなのに……。
理由はわからない。
その男は言葉を発していても無表情であった。
しかし、小百合にはその顔がまるで泣き叫んでいる自分を鏡で見ているように映る。
あなたは……わたし?
わたしは……だれ?
その心の声に応えてくれるものはいなかった……。
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