鬼の国

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 少年は変わった。  正確にいうと、少年の周りが変わったのだった。  少年はもう誰も殺す必要がない。  なぜならば、周りの者達はその少年が道を歩けば誰もがその道を譲り、少年が店に入ればすぐに彼の求める物を差し出したからだ。  少年は理解した。  これが    【強さ】    の意味であると。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  【町長の館】 「くそ! あいつのせいで……なんていう化け物を育てやがったんだ!」  そう呟くのはこの町の町長である。 「このままでは、町の被害がでかくなる。だが、この町に奴を止められるものはいない。」  町長が薄い頭を抱えて悩んでいると、隣に立っている若い男が進言した。 「隣町の彼に殺す事を依頼したらいかがですか?」  男の進言に、町長は声を荒げる。 「馬鹿か!! できるかそんなもん! あそこは去年うちと戦争したんじゃぞ! そのせいでどれだけ金を奪われたと思ってるんだ!! お前の頭はウジでも湧いてるんじゃないか?」 「ですが……。」 「そうだ!! 閃いたぞ!! あれだけの力を持ってるんだ! 殺すなんて勿体ない!」 「どういうことでしょうか?」 「いいから、俺の言う通り動け! そうだな、金を使って人を集めろ、男5人女5人だ!」 「はぁ……それはかまいませんが。せめてやることだけでも教えていただけませんか?」 「まだわからないのか? 家を与えて、飼いならすって事だ。」 「飼いならす!? あの少年を!? 本気ですか? 話を聞いていなかったのですか?」 「だから死んでもいい人間を集めるのだよ、死んだら補充すればいい。」 「とても町長の言葉とは思えませんね……。いいでしょう、やるしかないならやりますよ……。」  青年は全く納得していない顔で、町長の命令に従い人を集めた。  そして、伝令を少年の下に走らせ、これからは全て周りの者が世話をする旨伝えると、予想外な事にその伝令は少年に殺されることなく、少年はそれに従って、町の外れの屋敷に住むことになるのだった……。
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