鬼の国

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 少年は町長の言われた通り屋敷にやってきた。  その屋敷を初めて見た時、あまりの大きさに驚愕する。  そしてどうやら、飯も必要な物も全て、近くにいる者達がやってくれるみたいだ。  少年は力を持っているからこそ手に入れられたと納得した。  もう奪う必要はない……。  なぜなら奪う前に与えてくれるからだ。  そう理解するや、少年は安心した。  もう檻に閉じ込められなくて済むと……。  少年にとって、館での生活は正に快適そのものであった。  そして、そこで町長が仕組んだ道徳教育を受けることになる。  秘書は、町長の指示通り、無理矢理教育を施せば無為に死体を増やすだけだと思い、町長には黙って作戦を変えた。  日常の中で、さりげなく道徳教育を施していくのがまずは第一段階。  次に自らが自分で興味を持つように誘導した後に、鬼族のルールと年齢相応の心を教えていく。  この方策は的中した。  誠は次第に、年相応の子供と同じ様に成長していくことになるのだった。  そして時は流れ、誠は16歳になる。
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