鬼の国

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鬼の国

 とある鬼の国の檻の中……。  そこには何もない。  ただあるのは、用を足す為だけの穴と床だけ……。  そこにいるのはまだ小さく幼い男の子。  鬼と人との間に生まれた鬼人であった。  その子の瞳は氷のように冷めていた……。  なぜ生きているのか?  どうして生まれたのか?  それがわからない。  少年の前には赤く血に染まった女がいる。  彼女はその血に染まった真っ赤な手で少年の頭を撫でると、優しい声で言った。 「ごめんね……愛してる……。」  そして、もう……。  動かない。  今のはなんだったのだろう?  愛?  よくわからない。  少年は目の前で起こっている事が理解できなかった。  鬼の父が自分を殺そうとした。  人の母が肉の塊になった。  理由はわからない。  その鬼は笑っている。  僕に近づいてくる。  でも怖くない。  だって僕の方が強いから……。  なぜあの人は僕を庇ったのだろう?  僕が弱いと思った?  わからない。  でも殺そう。  目の前の鬼を殺そう。  少年が手から氷の刃を出すと鬼が襲いかかってくる。  しかし、その鬼の下半身は既に凍っていて動けない。 「くそ!この悪魔の子が!!」  父である鬼はそう叫ぶ。  しかし、少年はその言葉に気にもかけず、鬼の心臓に氷の刃を突き刺した。  父は殺した。  母は死んだ。  そして僕は1人になった……。    【愛してる】  その言葉だけが耳に残るのだった。
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