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空き地
子供って国の宝だって言うけどさ。
全然大事にされてなくね?
ってか公園って子供の遊び場じゃねぇのかよ?
どこもかしこも『ボール禁止』の看板出しやがって。
ボール禁止の癖にゲートボールはオッケーとか、未来を託す子供より今まで頑張って来たお年寄りが大事ってか?
そこは平等でお願いしますよ。
今日も俺と寛太は遊び場を確保する事が出来なかった。
小学校の校庭なんて狭くて早いもん勝ちで場所取り出来なかったら遊ぶ事など出来ない。
仕方なく学校を出て坂を下っていくと甘く香ばしい匂いが不貞腐れた俺たちを優しく包んだ。
「寛太ドーナッツ食べようぜ!」
「そうだな遊ぶとこねえしな」
寛太はネットに入ったサッカーボールを足で蹴ると白目になって答えた。
坂を下り切った所に豆腐屋がある。
そこの豆腐ドーナッツは一個50円でこのご時世に貴重な小学生に優しい場所なのだ。
「おじちゃん、豆腐ドーナッツひとつ」
「俺も」
俺と寛太は50円ずつカウンターに出した。
白い紙に包まれた揚げたてのドーナッツを渡され、俺と寛太は店先のベンチに座った。
「あーあ、つまんねぇな。サッカーの練習すら出来ないなんてさ、世も末だよな」
俺は天を仰いてため息混じりで言った。
空は汚してやりたくなるくらいに綺麗に澄んでいる。
「何を一丁前の事言ってるんだよ」
豆腐屋のおじちゃんが笑いながらサービスの小さな紙コップに入った温かい豆乳を持って来てくれた。
「遊ぶ所がないんすよ」
寛太が口を尖らせて不満をこぼすと、おじちゃんは少し考えた様に坂を眺めた。
「井戸の空き地はどうだ?確かまだあった筈…」
「井戸の空き地!?」
俺らは声を合わせて叫ぶと、おじちゃんに飛び付いた。
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