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999輪目
あれから十年が経った。
七年間、彼女とのやり取りは出来なかった。
あの出来事が、西日本の政府に話が漏れてしまったらしい。つまり、イギリスの政府に話が回ってしまった。そのせいで、十年間政府からの監視を受けることになった。
監視と言っても、そこまで厳しいことではなかった。授業中、登下校時間の時に見られてるくらい。それでも、外部とのやり取りを避けたいらしく、ケータイを買うことすら許して貰えなかった。
しかし、そんな生活が一変したのは三年前。ついに、日本が一つの国へと変わったのだ。
長い、長い他国からの占領を受けていた日本を救ったのは、意外にもスリランカの初代大統領である『J.R. ジャヤワルダナ』だった。彼の国連演説により、日本は一つの国として世界に復活することが出来た。
日本は、前よりもずっと豊かになり、日本語での教育も再スタートされた。
私はというと、大学に進んでから日本語を学んだので、まだまだ母国語のようには話せないので少し苦労している。公用語をいきなり変えたので混乱していたのだが、独立時に国会で全員一致の結果だったので変更されることはないだろう。
私は、あの出来事を忘れずにいた。いや、忘れることが出来なかったに等しい。私が連絡出来なかったのだが、彼女もきっと連絡を取ることが出来なかったのだろう。私達の場所よりも、彼女が住んでいる場所の方が情報規制が激しいのだ。仕方ない。
仕方ない、けど。それでも、彼女に会いたいと強く願っていた。
「うーん、今日も、いい天気だなぁ。」
一週間の休学の後、私は毎年ひまわりを育てることにした。私たちの思い出の場所は、私が学校に復帰した時には全て枯れていた。
その場所は、私が通っていた小学校の用務員さんが整備していたらしい。その話を聞いて、私はその用務員さんに話を聞きに行った。そして、私にあの場所を譲ってもらえないか、と相談した。
一瞬、ビックリしたような顔をしていたのだが、直ぐに微笑んで了承をもらえた。
そこで、十年間。ついに九九九輪のひまわりを植えることが出来た。目標としていた数のひまわりを咲かせた時には、彼女の顔を思い出した。
でも、十年前の話なので子供の時の顔しか覚えていない。
その時に、小さな約束をした。十年間、それを忘れることはなかった。そして、彼女の気持ちに返事をするべく、このひまわり達を植えた。太陽に向かって堂々と咲いている彼らは綺麗な黄色していた。
「あら、綺麗に咲いてますね〜」
ひまわりを見上げていると、後ろから話しかけられた。
「そうなんです、よ…」
カランッと握っていたスコップが落ちてしまった。振り返った先には、綺麗な黒髪を二つに結んだ女性がいた。
「…月が、綺麗ですね。」
彼女がそう言った後、彼女の元へと走って行った。そして、そのまま彼女の胸の中へと飛び込んだ。
顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったことなんて、気にすることなんて出来なかった。
変わらない匂い、変わらない笑顔に十年前と同じように胸を高鳴らせた。
「あぁ、やっと。月が見えたよ。」
〜終わり〜
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