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5.5柊真と眞比呂、ときどき伊吹
(柊真くんを初めて見たのは中国支社の時なんだ)
(え?)
(君が勤務していた頃、僕はまだ就任前だったんだが・・・グループ全体の視察中でね。素晴らしく有能だと聞いて、君のプレゼンをひっそり聞かせて貰ったよ)
(そ・・・そうだったんですか?)
(無駄が無く魅力的で、惹き込まれた・・・声もいい。周りの社員の評価も上々だ)
(・・・光栄です)
(それで、僕が東京に戻ることになったので、君を本社勤務に戻した)
(社長が自ら・・・?)
(そうなんだ・・・・・・何だか・・・子供じみていて申し訳ない)
「なにそれ、熱烈アプローチ!」
「やっぱそう思う?」
「いいじゃん、行っちゃえ、柊真フリーなんだから」
「まだ社長がゲイだって決まってないし・・・そもそも、何だかいろいろ、レベルが違いすぎて、戸惑うことしかないんだよね」
「何のレベル?夜の?」
「ほんとに眞比呂はそれしか考えてないよな」
「大事じゃん、夜のレベル。あ、ちなみに俺の彼P、最近レベル上がってきたんだよ」
伊吹がむせ込む。
眞比呂と柊真が同時に笑った。ひとしきり笑ってから、話題が柊真に戻る。
「夜もなにも、まだ一回食事しただけだよ。レベルっていうのは、金遣いの話」
「柊真結構金持ちなのに」
「そうなんだけどさ、俺なんか庶民よ庶民。時計の額もやばいし、帰り送って貰ったんだけど・・・当然車もやばかったし・・・」
「まあそりゃそうだよね。全グループの元締めだろ?」
「元締めって、ヤクザじゃねえから」
あはははは、と眞比呂が笑っている横で、伊吹は赤くなったり青くなったりしていた。
眞比呂の元彼との会話に嫉妬する、というよりは、未知の世界すぎて着いていけない、といった風だった。眞比呂はそれを楽しんでいた。
「で、次の約束は?」
「・・・来週、今度は違うバーに呼ばれてる。なんかめっちゃ高級な店」
「ゲイだったらいいのにね」
「・・・そこな」
「っていうか、柊真、年上苦手じゃなかったっけ」
「そう。ずっと年下ばっかり。そこもネックなんだよな」
「社長さん、どのくらい?」
「多分・・・50くらいかな」
「いいじゃん、脂乗ってる感じで」
「脂って」
結局何も解決しないまま、眞比呂と柊真の電話は終わった。
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