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紅碧の逢魔時、二人きりになった家では尋問が行われていた。
「君は本当に座敷童子なんだな?」
「そうだって何回も言ってるじゃん。しつこい男はモテないぞ」
「座敷童子に人間の恋愛の何がわかるんだよ」
「座敷童子って縁結びにも縁があるんだよ」
話によれば、この座敷童子は十五年くらい前にここに住み憑いて同居人は俺で五人目らしい。同居人にしか姿が見えず、家の外には出ない。食事や睡眠は必要とせず、遊んだり、お喋りをしたりすることで同居人に幸運を与えるのだとか。
「君が座敷童子って信じた同居人はいたの」
「最初はみんな疑ってたけど結果的には喜んでくれたよ」
座敷童子は得意気に笑った。
新居だと思っていたのに先客がいて、しかもそれが座敷童子でした。なんてことがあるだろうか。
水彩のような雲が流れていくのを眺めて、しばらく考えた。
「まぁ、いいよ。これからよろしく」
「よろしくね、同居人」
そうやって俺と座敷童子の奇妙な同居生活が始まった。
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