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座敷童子は毎日現れるわけではなく、気まぐれで神出鬼没に現れる。今日は仕事から帰ってきたと同時に子どものように足音を鳴らして現れた。
「おかえり」
「ただいま。俺が留守の間に部屋散らかしてないよな」
「してるわけないじゃん。悪戯と嫌がらせの区別くらいできるし。っていうか、まだ私が座敷童子ってこと疑ってる?」
「普通、引越し先のアパートに妖怪が住んでます一緒に暮らしてくださいって言われて、はいわかりましたっていう奴がいるか。また引越し先探すかお祓いするだろ」
「でも貴方はどっちもやらなかったよね」
「めんどくさいからだよ。ここが広さの割に家賃安いのってお前のせい?」
「座敷童子がいるのになんで安くなるのさ」
「それは不動産屋に聞け」
「そっくりそのまま返すよ」
入社式から一週間が経った頃、夕食を食べながら座敷童子と話すことが日常になっていた。座敷童子はテーブルに身を乗りだし、ご飯の香りを楽しんでいる。
「他の同居人のリアクションはどんなだったの?」
「一人目は普通に受け入れてくれたよ。こんなもんなのかって思ってたら二人目は怖がってた。危うくお祓いされそうになったよ。三人目は友好的だったかな。いっぱい遊んでくれた。四人目も最初は怪しんでたけど、退去前夜に涙のお別れをした。みんないい人だったよ。今はどこでなにしてんだろ」
「会いたい?」
「会いたいよ。でも私はこの家から出られないから」
「他の同居人にはなにしたの?」
「一人目は司法試験合格、二人目は内定、三人目は宝くじ当選、四人目は昇進。どう? ちょっとは私の力を思い知ったでしょ」
座敷童子は両手を腰に当て、胸を反らした。
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