素敵な同居人

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 桜の花弁が蝶のように舞っている。陽光を浴びて風と戯れながら、まだカーテンのついていない窓から迷いこんだ。 「由良(ゆら)くん。これどこに置けばいい?」 「キッチンにお願い。調理器具は下の棚で、お皿は上の棚で」 「了解!」 「手伝わせごめん。そっちも荷解きあるのに平気?」 「気にしなくていいよ。私の分は家族がやってくれてるし、一人暮らしで私より物が多い由良くんを手伝った方がいいでしょ」 「たしかに有り難いけど、実家からここまで遠くなかった?」 「電車で行ける距離だから問題ないよ。それより、由良くんの勤務先も山梨なんてびっくり」  本棚の組み立てに苦戦している俺は彼女の顔を見ずに言った。 「本当は大卒後も東京いたかったけど勤務地の希望が通らなくてさ」 「東京で働きたい人多いもんね」 「香織は山梨に戻るつもりだったの?」 「うん。実家から通いたかったから県内に絞って就活してた」 「それで入りたい企業があるんだからいいよな」 「運がいいだけだよ。それに県内に大学の友達がいるって嬉しいよ。落ち着いたら観光案内してあげる」 「ありがと」  今日から俺の新たな住処となる和室つきの1DKは、広さの割に家賃が安い。荷解きが終わったら食料と日用品を買い足さなければと思い、再び本棚と格闘する。 「これはどこに置けばいい?」  
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