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母さんに毎日説得されつつも、兄ちゃんは進学の意味がわからないと言って就職の道を選んだ。僕からすれば、頭がいいのにもったいないって思う。使わないなら僕の頭と取り替えてほしいくらいだ。
それから兄ちゃんは働いたお金で好きなものを買い、服装がどんどん派手になった。好きな俳優が着ている服装や髪型を真似て、それがどんどんエスカレートして、兄ちゃんが兄ちゃんでなくなるみたいで僕は時々〝似合わない〟と言ってやる。
だけどそんな小学生の言い分に兄ちゃんは〝お前もそのうちわかるさ〟と鼻で笑うんだ。
兄ちゃんは任侠役で一世風靡した高原ブンシが大好きで、映画の影響を受けて家でも方言まじりで話す。
とにかくブンシに似せようとしてるみたいなんだけど、どう見てもオーラはないし顔も似てない。うちにはそんなブンシもどきの兄ちゃんがいる。
しかし兄ちゃんも災難だ。年末にあんなことさえなかったら、周りからコソコソされることもなかったのにーー。
それは年末の、クリスマスイブ前日に起こった。僕と兄ちゃんが母さんに頼まれて、クリスマスケーキを買いに地下鉄で更科駅に向かう途中のこと。
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