第1章 天使降臨

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 1948年、エデュアルド・カーロ (Eduard kahlo)通称ラロは、メキシコの片田舎の町で生まれた。  父フェルナンド、母アイナは共に敬虔なキリスト教徒であり、神への感謝を怠らず、裕福ではないながらも幸せに暮らしていた。  フェルナンドは学校で社会科の教員をしており、特に民俗学や宗教学においてはいくつかの論文を発表しているほどの人物であった。博識であり、人格者でもあったフェルナンドは学校でも人気の高い教員であり、いずれは有名な大学に招聘されるのではないかと噂されていた。  アイナは中学までしか出ていないが、近隣でも有名な美人でフェルナンドとの結婚は一時期この片田舎を騒がせた。結婚後も美人であることを鼻にかけず、掃除に洗濯にと家事に勤しんでいた。  そんな二人は、ラロに惜しみない愛情を注いだ。まだ言葉を話せないラロに、フェルナンドは毎日聖書を読んで聞かせた。子守唄として、アイナは毎晩讃美歌を歌って聞かせた。夜泣きもせず、起きている時はいつも笑顔のラロを二人は天使様のようだと話していた。  やがて、両親に手を引かれて歩いて教会に訪れるラロは、綺麗な金髪(ブロンド)碧眼(ブルーアイズ)を持った整った顔立ちだったこともあり、近隣の住民からも天使様だと噂されるようになった。  ラロ自身はそんな事は全く気にもとめていなかっただろう。彼は、大好きなパパとママと一緒に出掛けられる事が嬉しくてしょうがなかっただけであった。  やがて、自我が芽生え始めても、両親の影響を強く受けていたラロは、自然と神や聖書を信じるキリスト教徒になっていった。
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