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「私、あなたの仕事に口を出したことないでしょう?
だから、あなたが仕事の間は、私のことにも口を出さないでね」
互いに干渉しないということは、俺の仕事環境も守られるということだ。
ヨメの提案に、特に異論はなかったのだが。
俺は、ヨメが平日昼間に何をしているのか全く分からないまま今に至る。
一つ屋根の下にいながら。
畜生。集中できない。
何か口に入れよう。
キッチンへ向かい、棚から板チョコを取り出す。
ズボッと音をたてて立ち上がるヨメ。
差し出される手。
なんと都合の良い根の張り方か。
「あなたが眠れる獅子を呼び覚ましたのよ」
妙に説得力がある。
結果、板チョコの3分の2を明け渡すことになった。
運動でもしたらどうだ?
喉元まで言葉が出かかっている。
しかし、口に出してはいけない。
ルールがあるからだ。
平日昼間は、互いのことに干渉しない──。
ヨメは、既に定位置について再び根を張り始めている。
チョコを貪りながら、黒縁眼鏡をずり上げるヨメ。
……ヨメよ。いつの間に、そんな根っこを生やしていたんだ。
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