平日、昼間のヨメの顔 〜うちに、壁に根を張るヨメがいます〜

オット、集中できず。

　……娘よ。
　今この家でいちばん「ちゃんとしてる」のは、お前だ──。

　ヨメは、ご機嫌でハンバーグのタネをこねている。
　今日はハンバーグか。
　家にいると、夕飯の献立がけっこう楽しみだったりする。
　ハンバーグは、なっちんの大好物だ。
　俺のテンションも上がる。

　ヨメが作るハンバーグは、なんてことない普通の家庭的なハンバーグだ。
　そこがいい。
　田舎のお袋を思い出す。しばらく会ってないが、元気だろうか。

　仕事、進まなかったな──。
　キッチンからの音や匂いとともに感じる罪悪感。
　同じくらい胸を満たす安心感。

　結局俺は、この家が好きなんだな。
　今日の分の仕事は、また近いうちに取り戻そう。

　この時間のヨメは、壁に根っこを張らない。
　俺は思う。「平日の昼間」が、終わったのだと──。