忘れられない人の話

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忘れられない人がいる。 彼女は、クラスの中ではそう目立たない。 どちらかといえば、一人が好きだというそんな雰囲気を身にまとっていた。 だから、あえて話しかけた。 自分の行動にも驚いたが、いきなり話しかけられた彼女は、よほど不気味に感じただろう。 それでも彼女は、優しい目をしていた。 その日から、少しずつ僕らの関係は変わっていった。 二人の時間はどこかこそばゆくて、でも楽しかった。 ただひたすらに楽しかったのだ。 突如、湧いた関係性に悪態つく人間もいた。 でも、彼女はそれを受け入れた。 元々そういう性分なのだろう。 自然と彼女の周りは囲まれた。 彼女は一人を好みながら、周りに好まれる人であったのだ。 そのことをどう思っていたのか今としてはわからない。 なぜなら、彼女は突然いなくなったから。 現実というものは、ひどくいびつな形をしている。 世界のどこかで人は生まれ、世界のどこかで人は死ぬ。 こんなことは当たり前だ。 当たり前に悲しい事実だ。 卒業してから月日は流れた。 遅すぎた世界も、早く感じるようになった。 だが、この季節は彼女を運んでくる。 だから、僕は彼女を忘れられない。
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