0人が本棚に入れています
本棚に追加
忘れられない人がいる。
彼女は、クラスの中ではそう目立たない。
どちらかといえば、一人が好きだというそんな雰囲気を身にまとっていた。
だから、あえて話しかけた。
自分の行動にも驚いたが、いきなり話しかけられた彼女は、よほど不気味に感じただろう。
それでも彼女は、優しい目をしていた。
その日から、少しずつ僕らの関係は変わっていった。
二人の時間はどこかこそばゆくて、でも楽しかった。
ただひたすらに楽しかったのだ。
突如、湧いた関係性に悪態つく人間もいた。
でも、彼女はそれを受け入れた。
元々そういう性分なのだろう。
自然と彼女の周りは囲まれた。
彼女は一人を好みながら、周りに好まれる人であったのだ。
そのことをどう思っていたのか今としてはわからない。
なぜなら、彼女は突然いなくなったから。
現実というものは、ひどくいびつな形をしている。
世界のどこかで人は生まれ、世界のどこかで人は死ぬ。
こんなことは当たり前だ。
当たり前に悲しい事実だ。
卒業してから月日は流れた。
遅すぎた世界も、早く感じるようになった。
だが、この季節は彼女を運んでくる。
だから、僕は彼女を忘れられない。
最初のコメントを投稿しよう!