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「…こんなとこで、なにしてんの…」
動揺が隠しきれない俺の問いかけに、
「あー、久々の広輔(こうすけ)の声は和むねー。ちょっと住むとこがなくなっちゃってさー。あれ、お前この辺りに就職したんだっけ?」
と、結也は、相変わらずの軽いノリで答えた。俺とこいつが関わる機会なんて、例え夢の中だとしても、もう二度とないだろうと思っていた。その程度の縁のはずだった。
懐かしさと、嬉しさと、そしてまさか名前を覚えてくれていたのかという意外さが、俺の気持ちを少しばかり持ち上げた。
「変わんねーな、お前。大変なときこそ、笑ってるとこ。割と困ってるんじゃねーの?雨降ってるし、今日はとりあえず俺の家、泊まってく?」
「…マジか!?うわぁ神様降臨だわー!!ありがてぇわー!!相変わらず、お前は優しいなぁー!!」
「神様って…。相変わらずなんて言うほど俺のこと知らないだろ、褒めすぎだわ。でも神様の言うことは絶対だぞ。」
「はいっ!多分!何でも言うこと聞きます!」
「テキトーだなー。まぁいいや、とりあえず、家こっちだから。」
こうして捨て犬のような状態で露頭に迷っていた結也を助けた結果、現在は俺の家に住み着いてしまった、というか、まぁ、今は一緒に住んでいるわけだ。
結也に会いたくて、俺の家の玄関前をかなりの頻度でウロウロしていた迷い猫のような女性、結也の彼女の智佳はというと、ご近所の目もあるのでとりあえず一旦家に入るよう勧めたところ、結局どういうわけか居着いてしまって今に至っている。
このカップルと俺の共同生活、不便がないと言えないが、基本的には気に入っている。何となく家事は分担できているし、金銭面でも適度な負担割合で、全員不満なく意見がまとまっている。
ここまでの経緯を聞く限りでは信じられないと思うが、俺はいつまでもこのままであって欲しいという無理な願いすら抱いている。
同じ家の中でカップルがイチャイチャ仲良くしている様子に、特定の相手もいない俺はモヤモヤすることももちろんある。それでも良い。この屋根の下にいられることで、ただ満たされる気持ちになる瞬間が、たくさんある。
なぜなら、俺は好きなんだ。
前からずっと、それくらい好きだったんだ。
結也のことが。
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