俺の家にいる、愛しい人。

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それは、土曜日の朝だった。 俺は昔から、朝型の生活だ。 こうして仕事がない日でも割と早く起きてしまう。早朝からゆっくりと朝食の支度をする時間は、嫌いじゃない。 ちなみに、一緒に住み始めて知ったことだが、結也は朝が弱い。眠くて目が開けられないまま食卓の席に座っている姿を、俺は台所から密かに眺めている。可愛くてたまらない。でも、好みの朝食が並んでいることに気がついた瞬間、パッと表情が変わる。子どもみたいに一生懸命食べ始める様子を見ていると、愛おしくて満ち足りた気持ちになる。 智佳はまだ帰っていないようだ。昨日の夜クラブのイベントがあると言っていたので、いつも通り今日のお昼頃の帰宅になるだろう。 二人きりの朝食になるかもしれない。 あいつ、朝は和食派なんだよな。でも魚より肉が好き。今なら下味をつける時間も十分にある。生姜焼きはどうだろうか。 普段は智佳も寝ているので遠慮しているが、今日は何かと理由をつけて、部屋まで起こしに行くというのも…。 普段の我慢の分なのか、妄想が止まらない。そんな俺の目を覚まさせるかのように、玄関の扉が開く音がした。 「ただいま。」 早朝ということもあり、帰宅した智佳は小声でリビングに入ってきた。 「おかえり。今日は早めだね。」 がっかりしている気持ちを悟られないよう、俺も小声で、そして丁寧に言葉を返した。 「うん、疲れちゃって、帰ってきた。」 そう言って智佳は、食卓の椅子に座った。そこは、普段結也が座っている席だろ、と俺はつい思ってしまった。やはり智佳の帰宅したタイミングに、やや心を乱されているのかもしれない。 「ねぇ。」 智佳が話しかけてきた。 「ん?」 「広輔くん、この家に、好きな人がいるでしょ。」
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