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コミュニケーションを取れるものが己のみになった世界には、残った資源を独り占めして謳歌する自分もいれば、孤独に耐えられず他の人間と同じ所へ行く自分もいる。そんな色んなシチュエーションの全てが男にとって魅力的だった。
今まで幾通りも考えて来たけれど、未だに崩壊世界への好奇心は全く衰えていない。むしろ増していくばかりだった。きっと誰も体験できないことだから興味は尽きない。答えは誰にも分からない。人間何が入っているか分からない箱があったら誰でも開けてみたくなるものだ。
けれど、本当にありえないことだから……男はいつも楽しむと共に残念に思っていた。ふとした時に始まる妄想はいつもため息で終わる。
人類が滅亡するようなことが起こったとしても誰か1人生き残るなんてことは無いだろう。もしも、万が一そんなことがあってもそれは自分じゃない。
3流というほど位の低い所ではないけれど、何の特徴もないそこそこの大学に通っていて、その学生の中でも目立たない。外見も学力も平々凡々。目立った趣味無し特技無し。
幼い頃から明確に夢見ている世界があって、それが人には無い珍しいものではあるけれど、それの為に何の努力もしていない。絶対に無理だからと諦めている。そんな人間に神がチャンスを与えるはずがない。選ばれる人間はいつだって99.9%無理でも努力している人間だ。
自分はただのモブ。そういう自覚が男にはあった……。
しかしそんなモブにも……神はチャンスを与えた。
講義室の後方のドアが徐に開いて、そこからゾンビが侵入してきた。
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