ウーマンデザイア

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 山田は向かいの家に住む美少女が四六時中、気になっていた。名を荒尾美野里と言って一人っ子でまだ高校2年生なのだが、体は既に成熟していて大人びた色気さえ漂わす。  彼女の両親はスーパーで働いていて日曜になると留守になるのだが、その昼間、晩春の頃からであった。美野里は庭に置いたデッキチェアに寝そべって日光浴をするようになったのだ。大胆にも手肩足を目一杯露出してだ。  山田はそのことに直ぐに気づいた。それと言うのが自宅の借家の東側の犬走に荒尾家の庭が面していて目隠し用のクチナシの生垣で仕切ってあるのだが、それは然程高くなく借家の腰窓から覗くことが可能だからだ。  実は山田は5年前に借家に引っ越して来てから美野里の両親と近所付き合いがてら美野里と話す機会があり今ではすっかり仲良くなっていて彼女の両親からも留守中、美野里を頼みますと信用されている程なのだ。  だから6月に入って第二日曜日も好い天気だったので日光浴をする美野里を見て初めて山田は、「そんな恰好で庭にいては男に襲われかねないよ!」と腰窓から思い切って注意してやると、彼女が笑顔で叫んだ。 「孝志さんも日光浴すればいいじゃない!」  隣のデッキチェアを指さしている。端から山田を誘う気だったのか、態々用意してあるのだ。確かに山田が隣に居れば、襲われはしないだろう。しかし、山田とて24歳の大の男だ。間違いがないとも限らない。だから山田は自分の克己心自制心を疑ったが、正直な所、美野里を好いているから結局、Tシャツにバミューダパンツ姿の儘、髪形をちょっと整えてからクチナシの花のジャスミンのような芳しい薫りを嗅ぎながらいそいそと芝生を踏みしめデッキチェアに座る美野里の所へやって来た。キャミソールにマイクロミニパンツ姿。綺麗な素足が際立ち超刺激的だ。 「やっぱり来ちゃったのね。はい、座って!」  これは完全に誘惑されていると思った山田は、期待感に胸が波立ち、むらむらにやにやしながら言われるが儘、デッキチェアに座った。  嗚呼、なんて若々しくてぴちぴちしてるんだ・・・日焼けクリームでてかっててまるで焼きたてのピーチパイみたいにおいしそうだ・・・と山田は思い、我を忘れて美野里の夭夭たる顔から奕奕たる脚へと目玉だけ動かして食い入るように見つめていると、「何見てるの?はい、日焼けクリーム!」と彼女が日焼けクリームを差し出したので、はっとして日焼けクリームを受け取り、「これは効くのかい?」と訊くと、「無駄口叩かないで早く塗って早く横になって!」と急かされたので、「あ、ああ。」と彼女の勢いに押された儘、言われたようにしてデッキチェアに寝そべった。 「これで安心だわ。」と美野里は含みのある笑顔で言うと、自分も寝そべった。山田は顔を横に向けて訊いた。 「そんなに日焼けしたいのかい?」 「小麦色の肌になりたいの。」 「そうか。黑ギャルに憧れてるのかい?」 「誰がそんな者に憧れるものですか!からかってるの?」 「からかってる訳じゃないさ。君は既に立派な大人の女性だもの」 「ほんとにそう見える?」  言いながら何気に長々とした鳥の濡れ羽色の髪を綺麗な繊手のか細いのにふっくらした指でしなやかに梳き、黑髪がさらさらと揺らめき、陽光にきらきらと輝く。その時の仕草と言い、表情と言い、妖艶ささえ湛えているので山田は恍惚として言った。 「ああ、見えるよ。」  すると、「ふふ、やったー!」と美野里は一転、子供っぽくはしゃいで喜んだ。内心当然よと思いながら、「孝志さんは小麦色の女性って好き?」 「まあ、嫌いじゃないけど、どっちかって言うと白い方が好きだ。」と山田は庭木の百日紅の白くてすべすべした樹皮を見ながら言った。 「そうなの、残念。」と美野里は言葉通り残念そうにつぶやいた。  山田はその気色をちらりと見て出来れば百日紅の鮮やかなピンクの花のように紅の差した白い肌がいいなあと思いながらも、「美野里ちゃんは小麦色も似合いそうだから好いと思うよ。」と言うと、「そう。やったー!」と美野里がまた喜んで、その勢いで上体を起こして言った。 「私、喉乾いちゃった!孝志さんもジュース飲む?」 「僕はジュースよりアイスコーヒーが飲みたいな。」 「そう、じゃあ、ちょっと待ってて!」と美野里は言うや、ビーチサンダルを履いて立ち上がり、ほっそりとした伸びやかな手足を軽快に快活に動かしながら母屋に向かった。  その途端、山田は今まで美野里にかまけていた為に急に雑音のようにニイニイゼミの鳴く声が耳に煩く響いて来た。やがて耳障りでもなくなって草花で色彩豊かに華やぐ庭を眺めている内、植え込みの中に紛れ込むように置いてある狸のオブジェに目が留まった。日差しを浴びて殊に陰嚢が艶々と光っている。自分の浅ましい性欲を表しているようで恥ずかしくなった時、折しも各々オレンジジュースとアイスコーヒーが入った二つのタンブラーを持って美野里が戻って来た。 「はい、どうぞ!」とかわいらしく美野里に差し出された山田は、感激し、サンクスと言ってアイスコーヒーを受け取った。     氷の音が如何にも涼しげで、それだけでこの区切られた空間が南国のリゾートビーチになり、飛び切りのカワイ子ちゃんに持てなされている感じがして何ともトロピカルな快い気分に山田はなるのだった。  美野里はデッキチェアに座るなりストローを銜え、オレンジジュースを喉を鳴らしてごくごくと飲んだ。  それに煽られて山田もストローを銜えると、勢いよく飲んだ。暫くして眠気を催し、目を瞑り、その儘、眠りに就いてしまった。
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