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「カヌーに乗って川に出て、それで途中でひっくり返ったんだろうって言われました。お母さんが自分でカヌー乗り場まで行ったのは確かだから、だったら自殺かもしれないって」
椿姫は、
「私があんなこと話したから、お母さんはショックを受けて川なんかに行ったんです。私が言わなければ、お母さんは死んでいなかったかもしれない。私のせいでお母さんは――」
「椿姫ちゃん!」
アンリに肩を揺すられてハッと我に返った。
「……ごめんなさい。私」
こんなこと、誰かに話したのは初めてだった。
言ってしまった自分に驚いていた。
アンリは首を振って、
「椿姫ちゃんのせいじゃないよって、そう言っても、きっと椿姫ちゃんには届かないね」
せっかく慰めてくれようとしているのに、アンリの言う通りなのが悲しかった。
椿姫の中の後悔は、絶対に消えない。
「ごめんなさい」
椿姫がうなだれると、
「いいよ。でもその代わり、明日一日、僕に付き合ってよ」
「付き合う?」
「うん。福井を離れる前に、僕を案内してくれないかな。珠樹ちゃんも一緒にね」
「でも学校が」
「サボってしまおう。学校には親戚のお兄さんが来たからとでも言えばいいよ」
軽く言って笑うアンリに、ちょっと呆れてしまった。
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