鬼のまれびと

1/8
前へ
/24ページ
次へ

鬼のまれびと

椿姫と珠樹の家の最寄りの勝原駅3b4b2d04-061c-4175-8267-ed7a79c97e92 家に帰ると湯飲み茶碗が椿姫に向かって飛んできた。 「こんな時間まで一体どこほっつき歩いてたんだ!」 とっさに腕で庇ったが、入っていた酒で服が濡れる。 また。 今夜は家で飲んでいたのかと、うんざりする。 「ちょっと出かけてただけだよ。ご飯も珠樹と食べてきたから」 ミュージアムショップの袋を隠すように抱える珠樹を、子ども部屋に押し込み、椿姫は何ごとも無かったのようにふすまを閉める。 「いまお義父さんのご飯も用意するね」 父親とは目を合わせないようにして、エプロンを手に取る。 すると、 「ふざけんな!」 いきなり髪を掴まれ引き倒された。 「親を放って、どこ遊び歩いてんだ」 「――」 殴られる。 こうなるともう何を言っても通じないから、椿姫はただ耐えるしかない。 でも、 「なんで黙ってんだよ、てめぇはよ!」 もうムチャクチャだ。 椿姫はひたすら体を丸めて、嵐が過ぎ去るのを待つ。 さっきまであんなに楽しかったのに、あっという間に地獄に戻って来てしまった。 アンリと過ごしたひとときが、夢みたいだ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加