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普段は静かで平和な村だ。
椿姫が悲鳴をあげれば、きっと誰かが駆けつけて来てくれるだろう。
椿姫はもう、あの何も知らなかった子どもではない。
今度こそ、ただの親子ゲンカなんかでは終わらせない。
決意を固めて男を睨みつけると、
「お前がイヤなら別にかまわねーよ」
男は意外にあっさり引いた。
しかし、
「お前がイヤなら、次は妹にするだけだ」
「――!」
この男は鬼だ。
サイテーで最悪で、人間とは思えない。
どう言えば椿姫が従うか、よく知っている。
「……」
椿姫は、自分を抱きしめていた腕を力なく落とす。
頭の中が真っ白だ。
もう何も考えられない。
そして、
「そうそう。お前も水に沈められたくなかったら、おとなしくしとけ」
「!?」
重ねられる絶望。
やはりお母さんは、この男に殺されていた。
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