夢のかけはし

2/3
前へ
/24ページ
次へ
男はスラリとした印象で、薄茶色の髪をして肌も白い。 この辺りでは見ないタイプだ。 しかし、この『夢のかけはし』に観光客が訪れるのは、新緑か紅葉の季節だけ。 まだ雪の残る3月に来ても寒いだけで何もないし、それにこの辺りには民家も外灯もないから、 「あの……、もうすぐ暗くなりますよ」 日が落ちれば、真っ暗になってしまう。 椿姫は、 「ここから最寄りの駅まで自転車で30分かかります。そして暗くなったら、冬眠から覚めたクマが出ますよ」 「――えっ、クマ⁉︎」 男は目を丸くして驚く。 椿姫は、 「ええ、腹ぺこクマです。会ったら命の保証は出来ません」 春先のクマは人を襲わないが、でも男を放っておけないと、椿姫は乗ってきた自転車を指さした。 「そういうわけで、私と一緒に来ませんか? 二人乗りは違反だけど、これは人命救助です」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加