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男はスラリとした印象で、薄茶色の髪をして肌も白い。
この辺りでは見ないタイプだ。
しかし、この『夢のかけはし』に観光客が訪れるのは、新緑か紅葉の季節だけ。
まだ雪の残る3月に来ても寒いだけで何もないし、それにこの辺りには民家も外灯もないから、
「あの……、もうすぐ暗くなりますよ」
日が落ちれば、真っ暗になってしまう。
椿姫は、
「ここから最寄りの駅まで自転車で30分かかります。そして暗くなったら、冬眠から覚めたクマが出ますよ」
「――えっ、クマ⁉︎」
男は目を丸くして驚く。
椿姫は、
「ええ、腹ぺこクマです。会ったら命の保証は出来ません」
春先のクマは人を襲わないが、でも男を放っておけないと、椿姫は乗ってきた自転車を指さした。
「そういうわけで、私と一緒に来ませんか? 二人乗りは違反だけど、これは人命救助です」
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