椿姫の家

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その時、玄関のドアがガラリと開けられる。 それから、 「おおい、帰ったぞ」 だみ声の大声。 珠樹がビクッと身をすくませる。 。 椿姫は 「ヤバイ、お義父さんが帰ってきた」 どうしてこういう日に限って早く帰ってくるのだろう。 「ごめんなさいアンリさん、ちょっと隠れてて」 「え、隠れるってどうして?」 「いいから早く!」 まだぐずぐす言うアンリを、強引に縁側から外に連れ出した。 夜も更けてから、やっとアンリを匿った車庫に行けた。 「ごめんなさい。寒かったでしょう」 取ってきた軽自動車のキーと、靴をアンリに渡す。 暖房も何もない車庫で、しかも裸足で待たせたのだ。 さぞかし冷えただろう。 でもアンリは、 「車のエンジンが温かかったから平気だよ。それにキミと出会わなきゃ、僕は今ごろ、まだあの橋の上で凍えていただろうからね」 ふわりと笑ってくれる。 椿姫はその笑みから目をそらして、 「もう最終の越美北戦も出ちゃいました。今夜はここで過ごしてもらわなくちゃなりません」 列車は日に5本しか停まらない。 イヤになるくらい田舎なのだ。 「明日の朝、5:51分の福井行きのがあるから、それに乗ってください」 「うん、ありがとう」 アンリはそう言って、椿姫の手から毛布を受け取った。
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