椿姫の家

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「ずっと?」 「うん、私が中学にあがったころから」 母親が再婚したのは、10年前だ。 その頃、まだ小学生だった椿姫が義父から与えられたのは暴力ではなく、自分が何をされているのか、最初は理解ができなかった。 ずいぶんイヤだと思ったが、でもソレが、新しい父親とのコミュニケーションなのだと、必死で思い込もうとした。 だけど、椿姫が中学生になり母親が留守にしたある日、その行為が、これまでとは何か違うに変化しそうになって、椿姫はついに悲鳴をあげた。 義父の手に噛みつき、泣いて助けを求めた。 ただ事ではない椿姫の声に、近所に住むオバチャンが駆けつけて来てくれたのだが、でもあの男は、 「ただの親子ゲンカですよ。こいつも反抗期ですかね」 笑ってそう言った。 普段は仲の良い親子に見えていたせいか、オバチャンは疑いもなく帰っていった。 その日から、義父の酒量が増えた。 思いもかけない椿姫の抵抗が癪に障ったのか、酔うと必ず椿姫に暴力を振るうようになった。 殴ったり蹴ったり、また火の付いたタバコを押しつけたりした。 けれど、あの日拒んだをされるより、よっぽどマシだったから、椿姫は声をあげなかった。 抵抗もしなかった。 与えられる体の痛みには、けっこうすぐに慣れた。
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