第一章 日曜日

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シノブとレオは中学時代からの付き合いだ。 見た目が華奢で病弱だったシノブには、なかなか男友達ができなかった。大病を抱えていたわけではなかったが、喘息を抱えていた。寒い時期は学校を休みがちだった。 レオはそんなシノブにできた初めての男友達だった。シノブは姉妹に囲まれて育った上、父親は海外出張も多く不在がちだった。そんな家庭で育ったシノブは、過保護に育てられてきていて初めてできた男友達のレオとの時間は新鮮だった。 高校に入ると二人は別の学校に通っていたが、それでも毎週末、連れ立って遊ぶ仲だった。この頃には段々と体力がついて喘息も出なくなってきていた。そんなシノブを遠慮なく連れ出してくれる、レオとの時間がとても有意義な時間に感じていた。 一方のレオはというと男ばかりの3兄弟の三男坊で、上の兄たちに揉まれながら育ってきていた。レオの父親は所謂スタジオミュージシャンというもので、主にレコーディングの際のギターやバックコーラスを入れる仕事をしていた。その為、子供の頃からレオは音楽にどっぷりハマっていて、大学生の今では父親についてスタジオに出入りもしている。見た目もミュージシャン見習いよろしく、派手なタイプだ。 またシノブの携帯が鳴った。 「あ、シノブ?オレオレ、レオ。今公園まで来たぜ。」 「あ、レオ君、公園のどこにいるの?西側から来てる?」 「え?え〜っと、これはどっちだろう?駅の東口って書いてる方かな〜」 「JRの駅の方?じゃあ、東側だよ」 シノブはさっき言いそびれた事を思い出した。 「レオ君、公園突っ切ったら近いんだけどそのルートだと暗くて危ないから、ちゃんと大通りを歩いてきてね」 「え?そうなの?もう公園の中に入っちゃったけど・・・」 「レオ君、体大きいから大丈夫だとは思うけれど・・・ほんと、気をつけてきてね」 「おう!俺体力には自信があるから大丈夫だって! 心配すんなって!そんなに酔ってもないし。あと少しで着くからマンション何号室だっけ?」 「えっと、北公園グランメゾンっていうマンションの710号室だよ」 「わかった。710な!オッケー。また後でな〜」 調子良く電話は切れてしまった。 シノブはさっきベランダの淵にかけた毛布のことを思い出した。夜気にあたって少し冷たくなったその毛布を手に取り寝室のベッドに広げた。 今からレオが来るなら、毛布をもう一枚出さねばならない。クローゼットから予備の毛布を引っ張り出して同じようにベランダで広げ埃を叩く。幸いこちらもすぐに使えそうだ。 その時ふと公園の方に目をやったシノブは、公園の東側から走ってくる人影を見つけた。 レオだ。 手に携帯を持ち駆け足でやってくる。 そんなレオの姿を上から見つめ、シノブは久しぶりの再会に嬉しくなった。 実はレオとは半年ほど会っていない。 レオは大学生で、シノブは専門学校を卒業後バイトをしながら声優を目指して修行中の身だからだ。 なかなか生活のリズムが揃わない。この半年は、LINEでのやりとりやSNSでしか繋がってない状況だった。
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