第一章 日曜日

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第一章 日曜日

その日の夜は寒かった。 まだ9月の終わりだというのに毛布が恋しくなるほどの気温だ。 この時期には、いつもベランダ側の窓を開けて寝ていたシノブだったが、窓を締めるか悩む程であった。 結局毛布を一枚クローゼットから出して寝る事に決めたシノブではあったが、少し埃っぽいその毛布を夜に出したことを少し後悔していた。 とは言っても窓を閉める気にはならなかった。 この時期特有の少し冷えた夜気が好きだったのだ。 シノブは少し埃っぽい毛布を抱えて裸足でベランダに出た。ベランダのタイルは思った以上に冷たかった。 抱えた毛布を広げパタパタと振って埃を叩いた。思った以上に埃は少なくすぐに使えそうだとホッとしていた。 その時シノブの携帯が鳴った。 手にしていた毛布をひとまずベランダの淵にかけて部屋に戻り携帯を取った。 レオからの着信だった。 「もしもし?レオ君?」 「あ、もしもし。シノブ?わりー、こんな時間に。久しぶり」 「うん。久しぶりだね。どうしたの?珍しいね? こんな時間に電話かけてくるの」 時間は既に夜中の0時を少し超えていた。 「俺、今近くにいるんだけど・・・今晩一晩止めてくんねえ?」 「え?・・・いいけど・・・どうしたの?」 「いや〜実は、今日ゼミの飲み会があって、さっきまで飲んでたんだけど、気がついたら終電逃しちゃって、女の家に行くのも面倒で」 「そっか。まあ何もないけど、それでよければいいよ。マンションの場所わかる?」 「マジ助かる!ありがとうシノブ。場所は確か北公園の近くだったよな?」 「うん。そそ。北公園の南側の赤茶色のタイルのマンション」 「じゃあ、今から5分位で着くと思うから。またマンションの下に着いたら電話するわ」 「わかった。気をつけてきてね。あ!北公園の・・・」 ここまで言ったところで電話は切れてしまった。 シノブはかけ直すか迷ったが、もう近くまで来ているなら大丈夫だろうと思うことにした。 北公園は、都会の中のオアシス的に作られた大きな公園で、三角形の形をしている。北の辺が広くなっていて南側は三角の頂点だ。だから南側にあるこのマンションからは、広い公園の樹々が見渡せるようになっていた。その景色が気に入って、シノブはこのマンションを借りたくらいだ。 ただこの公園の北東から入ってきた一角は、夜になるととても暗い。その為、夜中になると不良たちですら寄り付かなかった。 治安が特に悪いわけではないがこの辺りで育ったシノブは、夜中にはこの北公園の北東側の入り口から、公園を抜けるのはやめるようにと親に言われて育ったのだ。 きっとガタイのいいレオ君なら、大丈夫だよね・・・ しかも北側から来るかわかんないし・・・ そうシノブは思うことにした。
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